磯島伸自君は、6年の一学期ににカナダに移住しましたので、厳密に言うと田小の卒業生ではありませんが、忘れられない友です。彼はカナダに渡って以降, 私たちと一度も再開することなく、1981年に病を得て、急逝されました。その後、磯島君のお母さんと手紙をやり取りしており、また来日された時には、お会いしてお話もしております。

(左の写真は、1956年4月、磯島君がカナダに移住するに際して、記念にくれたものです。）











　さて、1998年寺田君の好意により、私たちの卒業文集「巣立ち」のコピーを送って戴きました。私の手元には昔のものが残っていたので、それを磯島君のお母さんに送りました。
　そのあと、1999年2月、お母さんより、昔を懐かしんでお手紙をいただきました。磯島君のその後を知る貴重な内容ですので以下に抜粋いたします。

○　磯島君のお母様節子様よりのお手紙

「　御無沙汰いたしておりますが、お変わりなくお過ごしでいらっしゃいますか？　1月には沢山の珍しい切手とか懐かしい卒業文集をお送りくださいまして、有難うございました。御礼申し上げます。
　昨年は40周年のクラス会、また、記念旅行もなさいましたとの事、6年2組の方々の美しい友情には感心致しました。皆様本当に偉いと思います。大迫先生がいらっしゃったら、どんなにかお喜びになった事でしょうね。
　伸自もおりましたら、それをチャンスに飛んで行った事かと残念に思います。以前お送り下さいました文集は、伸自が皆様にお別れした際に書いたものでした。この度のは、関君より卒業文集にのせて上げるから書くようにとお便り頂きましたので､お送り致したものでした。
　私もあらためて其の当時の事を思い出しまし“どんな事を書いたの？”と聞きましたら､僕は書くのが下手だから見せないと笑っていました。その顔が今でも目にうつります。
　それを42年後,お蔭様で読ませていただきまして、何と御礼申し上げてよいのか感無量です。
　関君の“磯島君の思い出”と題して書いて下さいました作文。何度読んでも、お優しい友情に心打たれて、涙なしには読めません。
　亦、唐沢君もお近くでしたので、よく覚えております。彼の作文にも心打たれ、ご立派になっていらっしゃる事でしょうと思っております。　
　伸自も大迫先生になった時には、どんなに喜びました事か。−−−−−　　そして級友の皆様によくして頂いて学校から帰ってくると毎日ニコニコでした。
　ご立派な先生でしたのに早くお亡くなりになって、惜しいですね。−−−−
　伸自の父も同じ年でしたので覚えやすいです。
　文集を頂きましたお陰で、級友の方々のお名前も殆ど思い出し、皆様さぞかしご立派になられた事でしょうと、思いを馳せております。

　1970年伸自が結婚しました時に、どこにハネムーンに行きたいの？と聞きましたら、“日本に行って関君に会いたい”と申しました。
　勇んで行きましたのに、東京は知っているつもりでも何しろ子供の時でしたので、約束の忠犬ハチ公がどこだか探すのに手間どって遅くなってしまい、とうとう会えなかったと大変残念がっておりました。
　その前にも公衆電話でお話したそうですけれど、日本の電話はコインを入れてもすぐ切れてしまったとか！−−−次々と入れなければ切れるという事を知らなかった為でした。こちらの電話は一度コインを入れたら幾らでも話が出来るので、その感覚だったと思います。

　伸自の父はカナダのバンクーバー島生まれの二世でしたけれど７才の時に父親が事故で亡くなった為、一家は鳥取県米子市に引き揚げ、その後ずっと日本に居りましたけど、1956年、３８才の時に帰加致しました。
　1957年私たちは一年遅れでカナダに参りました。
　その年の9月から伸自は4年生、妹の三枝子は2年生になりまして、二人ともチンプンカンプン。１年位は英語に苦労したようです。
　伸自が一番嬉しそうな顔をした学科は数学で、ドイツから来た子と二人が言葉が判らなくても、それだけは負けないんだと、よく話していました。
　そして5,6年生とゆきまして、ジュニアハイスクール（7,8年生）になったら、すぐ8年生に進級しました。三枝子も同じ頃進級しました。
　大学では「化学」の方を専攻し、卒業後、オタワ政府の鉱山省に1年勤めましたけど役人の仕事は好きでないとか言って、トロントに帰ってきて精油会社（GULF　OIL)に勤め、重油の研究をしておりました。たまたま、オタワ政府から取り寄せた研究書類の中に日本語のがあったりすると,他に日本語の判る人がいない為、専門用語の辞書など取り寄せて,つたない日本語でしたけど,田小で学んだ事が幾らか役に立ったようです。

　　（　中略　）

　　長くなりましたついでに−−−−−
　　先日,新聞で”ジャイアント馬場”さんがお亡くなりになりました記事を読みまして、いろいろ懐かしい思い出がよみがえって来ました。当時,家の前を読売ジャイアンツの二軍の選手の方々が練習にお通いになりましたので、馬場さんは優しくいつもニコニコして、伸自や三枝子は,よく腕にぶら下がったりして遊んでいただいたものです。
　　当地に参りまして,３〜4年経った頃でしたでしょうか？プロレスラーになられる為,トロントから約1時間位ドライブして行くところのクリスタルビーチに滞在中（1年半位練習）一晩だけトロントに試合にいらっしゃるとニュースで見ましたので,伸自はとても会いたがって居りましたけど、なにしろ試験の最中でしたので、それもかなわず残念がっておりました。
　それで私が電話しましたら,白人のマネージャーで大事をとって,誰にも面会は勿論の事,電話も取り次がないと申しましたけど,事情をよく説明しましたらお話させていただきました。馬場さんは「よく覚えているよ、坊や達はどうしていますか----」と言って,とても懐かしく思って下さいました。
　三枝子にも馬場さんの死亡を伝えましたら、いろいろ想い出話をして居りました。

　思いのまま書いておりましたら、ずいぶん長くなってしまいました。ご免なさいね。
　寺田君にお話されるチャンスでもございましたら、懐かしい文集を戴いて心より感謝いたしております、とお伝え下さいませ。お願い申し上げます。」

　ジャイアント馬場のことについては、磯島君より1963年12月23日にもらった手紙にも次のように書いてありました。
　「まえに巨人軍にいた馬場さんが今カナダにきています。トロントには毎木曜日にレスリングをしにきていますが、僕はレスリングが嫌いなのでまだみにいってませんが、母がこのあいだ電話をかけてみました。」

　磯島君のお母さんは現在カナダのトロントにお住まいで、隣には伸自君の奥さん、長男、次男が住んでおられるとのことです。