父兄参観日に

父兄参観日に　　　　　　三輪　正眼

　大迫先生にお世話になった小学校五、六年はノスタルジックな私が思い起こす対象として最も心地よい、好きな時期である。
　私は授業中不真面目な生徒であった様で、ある日選りにも選って父兄参観日に先生の怒りを買って後ろに立たされるはめになった。授業の終わり近くになって、質問に答えられたら席に戻ってよいと私にチャンスを与えて下さった。
　理科の時間であったので質間は、「御飯を口に入れ、噛んだ後ヨードチンキを流し込んだらどうなるか?」　澱粉はヨードチンキと反応すると青色になるが唾液の働きで糖分に変わると反応しない。
　何とか正解を答えて席に戻った私はもう半ベソであった。今にして思えば恥の掻かせっ放しではなく、ちゃんと鞘に納めて項いた訳である。
　当時は何故だかよく判らなかったが、大変居心地のよい日々を過ごせたその背景に、大迫先生のこの様なすばらしい御配慮があったことを、今しみじみと思って感謝している次第である。